サクラサク





欅曰く、草薙の剣が置かれている草の祠は山の中にあるそうだ。
欅に案内され、咲達は山を登った。
山道をよく歩いていなければ大抵の人は堪える道だが、山菜をよく採りに行っていた咲は軽々と進んだ。
もちろん欅や2匹の狼も楽々と山道を歩いていく。
道のところどころでは食べられそうな草や茸が生えていて、咲は目を輝かせていた。
見たことない茸を見つけた咲がそれに手を伸ばした。
すると、欅が「それは毒茸だ。こっちなら食べられる」と咲に言った。
意外と茸のことを知っている欅に咲は意外性を感じながら、欅に言われた茸を採った。
それを軽食として食べて、咲達は再び山を登った。
半分ぐらい登ったとき咲は空を見上げた。
少しだけ咲の足が疲れたと嘆いていた。
登り始めたときと比べて、空との距離が縮んだような気がした。
このまま登ったらもっと空が近くなると考えるだけで、咲はまだまだ続く山道をたくさん登りたくなった。
しばらく登ると、鳥居と祠が見えた。


「あれが草の祠?古い建物だね」


祠の木材は春風神宮、花守神社と比べて古びていた。
古びた木材に地面から生えた草が巻きついていた。
辺り一面は花が見当たらなく、草や葉を付けた木が生えていた。
祠の前には2匹の狛犬が立っていた。
木々に囲まれているためか薄暗く、夜になれば何か出てきそうな雰囲気を醸しだしていた。


「1000年以上前に建てられたからな。山の中だから誰も手入れに来なかったと聞く」
「なんだか怖いところだね」
「誰だ」


祠の脇から鞘に納まった剣を抱えた少女が現れた。
見た目は咲と歳が変わらない程だった。
巫女装束で、相手に睨んでいるようなきつい目を持っていた。
咲に目を止めると、少女を今まで会ってきた神々と同じ顔をした。


「お主、名前は?」
「咲だよ。あなたは?」
「私は草茅姫。草の神だ。お主らは何をしにここへ来た」


欅が佐保姫の前でしたように片足を地面に付けて頭を下げた。


「私達は草薙の剣を取りに来たものです。神器は2つ集まりました。残るは草薙の剣なのです」
「お主らが本当にそうなのか、証拠を見せろ」


証拠と言われて、欅が驚いた顔をしながら顔を上げた。
だが、草茅姫は何も言わずに欅を見下ろしていた。


「あたしがいることは証拠でしょ?」


何も言わない欅の代わりに蕾が言った。
草茅姫の冷ややかな目が蕾に向けられた。


「蕾か。お主、今まで何をしておった」
「…咲希様に封印されていたのよ」
「なら、尚更信用出来ぬ」
「なんで!」
「貴様が鬼の手先かもしれないからだ」
「そんなことない!」
「なら何故咲希はお主を封印した」
「それは…」
「わからぬ以上、草薙の剣を渡すわけにはいかん。立ち去れ」


草茅姫は信念を曲げないと言った目で咲達を見ていた。

 

+++

 

欅の判断で出直すことになった咲達は村に戻ることにした。
蕾は草の祠から出てから仏像顔をしていた。
鳥居が見えなくなると、蕾は我慢していた不満を漏らした。


「あーもう!草茅姫の頑固者!前はあんなんじゃなかったのに」
「きっと何かあったんじゃないかな?」
「いつもとお代わらぬ方だ」


欅は何度か草茅姫と会ったことがあるらしい。
顔が厄介な御方だと告げていた。


「でも、あんなきつい言い方なんてしなかった」


怒りながらも、蕾はあんなふうになった草茅姫を気に掛けているようだ。
蕾の様子を見た咲は決意した。


「聞いてみよう!」
「誰に?」
「草茅姫に!」


そう告げて咲は狼達と共に来た道を戻っていった。
欅と蕾が止めようとするが、咲達の背中は遠くなっていた。





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