貴様は私の何なのだ…?
分からない…
記憶喪失になってしまった私には分からない…
それに…先程から感じるこの気持ちは一体何なのだ…?
何もわからない…
何も思い出せない…
早く、この記憶喪失という名の迷宮から出たい…


 


 


知らない世界

 

 

 



ルキアが眠ってしばらくすると夕食が出来て恋次と冬獅朗がルキアを起こしにきた。ルキアは少し眠そうな顔をしながら体を起こして冬獅朗と一緒に浦原達がいるところへと向かって行き、浦原達と一緒に夕食を食べた。夕食を食べた後、ルキアはお風呂に入り体を清めて部屋に入りまた横になった。
横になるとルキアは天井を見つめながら今日1日の出来事を頭の中で振り返っていた。上官だという冬獅朗と乱菊、家族のような存在だという恋次に逢い、チャッピ―という人に逢い、自分と一護の関係を聞くことが出来て、自分の記憶を少し取り戻すことが出来た。
ルキアは自分の記憶を少し取り戻すことが出来たのが嬉しかった。
取り戻した時、早く他の記憶も取り戻したいと強く思った。そう思っていると頭に一護の顔が浮かんだ。一護の顔が浮かぶと何故かルキアの表情が緩んで笑顔になっていた。


―一護はとても優しいな…


先ほどまでの一護との時間を思い出しながらルキアはふと思った。


オレンジの髪の所為ではないが一護の優しい光がとても暖かな太陽の光に思えてしまう…
…何故・・・あんなに優しくしてくれるのだろうか…?
冬獅朗殿と乱菊殿は上司で、恋次は家族みたいな者だから、優しくしてくれることに納得する…
…だが…一護とは何もない…
本人の口からも私と一護の関係を一言も聞いたことがない…・
それに…一護は私に私と一護の関係を一切口にしない…
ということは…私と一護はひょっとして無関係かもしれない…
だが…無関係なのにあんなに優しくしてくれるものだろうか…?
昨日もそうだ…
何もわからない、何も覚えてなく、孤独となってしまった私を一護は優しく包み込んでくれた…
…何故だ…?
何故…私を優しく包み込んでくれたのだ…?
それに…私は…一護の一体何なのだ…?
兄と妹…?姉と弟…?家族…?
…だが…そしたら私を家へ連れて行ってくれるはずだ…
…肉親であることはないと考えてよう…
…では…親友か…?
それとも…従兄妹…?
そちらの方は確率があるが…ここまで優しくしてくれるものだろうか…?
とても暖かな声を掛けてくれるのだろうか…?
残るは……恋…人…?


そう思った瞬間ルキアは顔らへんが熱くなり、顔が赤くなっている気がした。

顔が赤くなった自分が恥ずかしくなりルキアは布団の中に潜った。

布団に潜った所為でルキアの瞳に映るのは光を失った暗い世界となった。


―…そ…そんな事はないか…いや…あるはずがない…


少しパニック状態になりかけながらルキアは赤くなった顔を手で覆った。顔を手で覆うと先ほどからの自分の気持ちや考えが疑問に思えた。


何故…こんなことを考えると体が熱くなってしまうのだろうか…
それに…何故私は一護のことばかり考えているのだ…?


ルキアは先ほどから一護のことばかり考えている自分を恥ずかしく思ったが、本能では何故か自分と一護の関係を知りたいと叫んでいた。

そういえば、さっきから体の体温がさっきからどんどん上がっているような気がした。

何故、一護のことを考えると体が熱くなっていくのかルキアには理解出来なかった。

恥ずかしいからといってこんなにも体が熱くなるものなのだろうか?とルキアは不思議に思った。

あと、恋人同士ではないのにどうして恋人同士だったことを期待してしまうのかもまったく理解出来なかった。

理解出来ない事だらけで頭が少し混乱していると同じ屋根の下で自分と一護の関係を知っていそうな冬獅朗と恋次、浦原がいたことを思い出した。


…冬獅朗殿や恋次、浦原に聞けば…わかるかもしれない…
だが…訊くことが…怖い…
訊くと…落としたガラスの陶器のように何かが壊れてしまいそうで…怖い…
だが…もし…もし…恋人…だったら…私は…


ルキアは布団から顔を出し、枕の上に頭を乗せて再び天井を見つめて、布団の中にある拳を強く握り締めた。


…早く…記憶を取り戻したい…
…そして…早く…一護との関係を…知りたい…


そう思いながらルキアはゆっくりと瞳を閉じて深く静かな眠りの世界へと舞い降りていった。
ルキアが目を閉じてしばらくすると、部屋の戸が静かに開いて廊下からの光が暗い部屋を照らしてきた。


「ルキ…」


戸を開けた張本人の恋次は電気が消えている部屋の真中にしかれている一枚の布団の上でルキアが寝ていることに気付いた。


「眠ったのか?」


恋次の隣にいる冬獅朗は恋次の反応を見て部屋の中を覗いてみた。
部屋の真中にある布団の上ではルキアが横になって静かな寝息をたてて眠っていた。冬獅朗の質問に頷きながらそうらしいです、と恋次は答えた。
静かに寝息をたてているルキアはもう、恋次や冬獅朗が行くことが出来ない眠りの世界へと旅立ってしまったらしい。


「まぁ、知らない奴らにたくさん会ったんだから疲れても仕方ないな…」


冬獅朗はそう言いながらルキアを起こさないように部屋の戸を静かに閉めて戸に背中を向けた。


「…いつになったら、ルキアの記憶が戻るんでしょうか…」


閉められた戸を見つめながら恋次は悲しそうに呟いた。
ルキアとは親友でルキアが朽木家に行く前、唯一の家族みたいな存在であった恋次にとってはルキアが記憶喪失になり、自分のことを忘れてしまったことが悲しかったのだった。
もし、このまま記憶が戻らなかったらルキアはいつまでも迷宮の中でさ迷い続けなくてはならない。そんなルキアを考えただけでも恋次は辛かった。


「わからねぇ…それは朽木の妹しだいだ…」


日番谷はそう言うと恋次に背を向けて廊下を歩き出した。

恋次は何も言わず少し暗い顔をしながら後を歩いていった。

日番谷と恋次が歩いている廊下に2人の足音が静かに響いた。

 

 


To be continued


back/next

 

[戻る]