知らない世界
浦原商店に寄った後、一護達はそのまま別れず一緒に学校に登校した。
ルキアが記憶喪失ということで暗い気持ちを背負っている一護達と違って学校は生徒達の笑い声や楽しそうに会話する声などが響いていた。
「いっちごー!」
暗い気持ちを背負いながら教室に入ってきた一護に向かって一護の友達の啓吾が笑顔で走ってきて一護に飛びつこうとした。
走ってくる啓吾を見て一護は平然とした顔で普通に飛びついてくる啓吾を避けて教室の中へ入って行った。
一護に避けられた啓吾は廊下の壁にぶつかり頭を打ったのか痛そうな顔をして片手で頭を抑えながら教室に入ってきた。
「おはよ一護。今日はどうしたの?家に行ったらもう出たと聞いて学校へ来てみるといなかったし…」
自分の机の上に鞄を置いくと友達である水色が来て不思議そうに一護に話し掛けてきた。
「別に何でもねぇ…」
そう言葉を返すと一護は椅子を引いて席につくと背がとても高いチャドが一護の席に来て互いに挨拶をした。
チャドが来ると先ほど一護に飛びつこうとした啓吾が痛そうな顔をして来て騒ぎ始めたが一護は無視して隣を見た。
隣はいつも座って本を読んでいるはずのあいつがいない所為で誰も座っていない空っぽな席だった。
あいつの体にはチャッピーが入っており、ルキアの変わりにチャッピーが来てもいいがあいつはルキアが記憶喪失と聞いてかなり落ち込んでいた。
家では家族にルキアが記憶喪失ということを気付かれないようにチャッピーがルキアを演じているが家族の前でルキアの振りするだけでも精一杯そうだった。
無理をしてまで学校に来させたら周りの人達が心配するし、チャッピーに負担がかかると思い学校へ言った振りをして今は浦原さんのところでルキアと一緒にいるはずだ。
―…ルキアは今…何やってんだろうか…?
いつも隣にいるはずのあいつ、猫被りをしてみんなと会話をしているはずのあいつ、俺の所為で学校へ来られなくなってしまった。
―…俺の…所為で…。
一護は空っぽな席を見るのを止めて前で何か話している啓吾達に顔を向けて話を聞き始めた。
が、啓吾達の会話を聞いてもあいつのことが頭から離れずあいつのことを気にしてしまいいつものように聞くことが出来なかった。ルキアは昨日と比べて少しは明るくなっていたが、まだ過去の記憶を1つも取り戻していなかった。
―どうすればいいんだよ。
一護が深く考え思っていると話はいつの間にかルキアの話になっていて啓吾がルキアがいないと騒いでとてもうるさかった。
クラスの奴らもルキアが休みだと聞いたらしくどうしたのかな?と心配そうな顔を互いしながらに話していた。
「乱菊さん、朽木さん風邪かな…?」
クラスメートの人達と同じく織姫も心配そうな顔をしながら乱菊に話し掛けると、乱菊の顔の表情が微妙に変わった。
「織姫ちゃん…昼休み…空いている…?」
「う、うん…」
突然の乱菊の質問に少し戸惑った様子で織姫は頷きながら答えた。
「ちょっと話があるんだけど…いいかな?」
「うん…」
「ありがとう」
乱菊が穏やかな表情で言うと織姫は今日休みとなったルキアに何かあったのか不安に思った。
教室の中での笑い声や話し声全てが五月蝿いと思いながら恋次はムスッとした顔をして椅子に座っていた。
―何であいつが記憶喪失にならなきゃいけねぇんだよ…何で…あいつが…記憶喪失になんなきゃいけねぇんだよ。
眉間の皺がいつもより深くなりながら恋次は1人で考え込んでいた。
―俺が絶対にルキアの記憶を取り戻してやる…一護にぜってぇ取り戻させねぇ・・・!
そう決意している恋次を見てにクラスの人達は恋次の背後から出てくる黒い殺気のようなものが怖いと、思っていた。
少し離れたところから恋次を見ている冬獅郎はとても厭きれた様子でハァと、溜息をついていた。
すると、予鈴が鳴って教室に担任の先生が入ってくると教室にいる生徒達は一斉に席へ素早く着いた。
午前中の授業、それぞれの教科を担当している先生が前でその教科に関することを白や黄色などのチョークを使って黒板に図や文字などを書いていた。
先生が黒板に書いたことや先生が言っていることなどを生徒達は何も書いていない真っ白なページにシャーペンや色ペンでどんどん書いていった。
教室には先生が黒板を使って説明している声がよく響いていてちゃんと授業を受けている生徒だったら聞こえているが、一護にはあまり聞こえなかった。
一護は先生が黒板に書いたことはちゃんとノートに写しながらずっとルキアのことを考えていて先生の話があまり耳に入らなかった。
どうすればあいつの記憶が戻るのか、どうしてあいつが記憶喪失になってしまったのか、いろいろ考えてみたが一護の頭には何も浮かばなかった。
いろいろ考えながら過ごしているうちにいつの間にか4時間目の授業が終わっていてその教科の先生が教室を出て行っていた。
―…いつの間にか昼になっていたのか…。
先生の話をまったく聞いていなかった一護は大事な話をしていたらどうしようと少し不安に思いながら教科書を整理していると冬獅朗が来た。
「一護、弁当持って屋上に来い」
「…わかった」
ルキアのことか?と、思いながら一護が頷くと冬獅朗はさっさと教室を出て行った。
冬獅朗が教室を出て行った後、啓吾と水色が一緒にお昼食べようぜ!と一護を誘ったが一護はそれを断り、鞄から弁当を取り出すと屋上へと向かって行った。
廊下を歩き階段を上がり屋上の扉を開けるとそこには冬獅朗と乱菊、恋次、一角に弓親、石田、織姫やチャドの尸魂界に関係のある人物が輪になって腰を下ろしお昼を食べていた。
「全員揃ったな…」
一護から見て正面に座りながらパンを食べていた冬獅朗がパンを飲み込んでそう言った。
「冬獅朗…これは一体…」
冬獅朗達の輪の中に入り座りながら一護は不思議そうに冬獅朗に訊いた。
「朽木の妹についてちょっとな…」
「朽木さん、やっぱり何かあったの?」
パンを食べていた織姫は心配そうな顔をしながら冬獅朗に訊くと冬獅朗はパンを食べながら頷いた。
「朽木の妹は今、記憶喪失となっている」
このことを知らなかった人達はとても驚いた顔をしてこのことをもう聞いた一護達は暗い表情をしながらお昼を食べていた。
「何だって!?」
「嘘…朽木さん…記憶喪失になっちゃったの…?」
「ああ…記憶喪失になったのは昨日虚にやられてそのまま意識を失い、目を覚ましたと思ったら記憶喪失になっていたいという話だそうだ」
「……」
冬獅朗が説明してまたパンを食べていると信じられなさそうな顔をしながら織姫達は黙って下を向いていた。
「…その虚はどんな奴だったんだい?」
黙っている間どうしてルキアが記憶喪失になったのか考えていた雨竜がふと思ったことを冬獅朗に訊いた。
「わからない…駆けつけるとその虚は逃げていったらしからな…」
「朽木さんの様子はどうなの…?」
織姫は手を止めて心配そうな顔をしながら隣でパンを食べている乱菊に訊いた。
「記憶喪失以外は大丈夫だそうよ」
「よかった…」
心配そうな顔ばかりしていた織姫はルキアが大丈夫と聞いてほっとして少しだけ明るい顔になった。
「朽木さんの記憶はどこまで取り戻したんだい?」
先ほどから冬獅朗に質問をしている雨竜を見て、よく質問内容が思いつくなぁ・・・と一角は思った。
「まだ何も取り戻していないと本人はそう言っていた…」
「そうか…ところで朽木さんは今何処にいるんだい?」
「今は浦原という奴のところにいる、俺らは放課後にまた浦原のところに行って朽木の様子を見てこようと思う」
「じゃあ、あたしも…!」
「いや、知らない人が1日にたくさん来ると朽木の妹に少し負担がかかるかもしれねぇから様子を見に行くのは明日にしてくれねぇか?」
ルキアに会って直接本人の様子などを聞きたかった織姫は冬獅朗に止められて暗い顔をしながら下を向いた。
「…うん、わかった…」
「じゃあ僕達は朽木さんの記憶を取り戻す方法を探してみるよ」
様子を見に行けないのならせめて何か役にたつことをしておこうと思った雨竜は冬獅朗達に言った。
「ああ…頼むな…あと、朽木の妹が記憶喪失になったってことは俺達以外誰も言うなよ」
真剣な顔をしながら冬獅朗がそう言うと雨竜と織姫とチャドは昼食を食べてながら一斉に頷いた。
「朽木女史が記憶喪失の間はどうすんだ?」
今まで話を聞いているだけだった一角が手を止めて言うと他の人もそういえば・・・と思いながら昼食を食べていた。
「とりあえず、この一週間は学校には風邪ということでしばらく休ませてみるが…それ以上はまだ決めてねぇ…」
「そうだね、いくら風邪とはいえ一週間以上休んだらみんな不思議に思うものね…」
パンを食べ終えて袋を持ち歩きやすく小さくたたみながら織姫は納得した顔をしていた。
「ルキアの体に入ってる義魂丸に頼んで学校に来てもらえばいいじゃねぇか」
一角と同じく話を聞いているだけだった恋次はもうパンを食べ終わっていて小さく丸めた袋を手に持ちながら言った。
「それはダメだ…」
恋次と同じく話を聞いているだけだった一護は食べ終わった弁当を片付けている手を止めて下を向いたまま暗い表情をしていた。
「何でだよ」
いい案じゃねぇかと思いながら恋次は一護を睨んでいるような目をしながら一護を見た。
「家では家族にルキアが記憶喪失になったとは言わずあいつがルキアのかわりに家族と一緒に生活しているんだが、あいつは家族の前では笑顔で笑っているがルキアが記憶喪失になったことがとてもショックだったらしく、家族が見ていないところではとても辛い顔をしてたんだ…だから、無理して学校に行くとあいつはもたねぇと思うぜ」
家でのチャッピーの様子を知っている一護が家での様子をふまえた意見を言うと、冬獅朗達はそれじゃあ大変だまと思った。
「そうか…もし、そいつが大丈夫な風になったら学校に出てもらうよう頼んでくれねぇか?」
「ああ…」
一護が言葉を返すと昼休みが終わりだと告げる予鈴の高い音が学校中に鳴り響いた。
予鈴の音を聞いた一護達は授業に遅れると思い急いで弁当をしまったりして屋上を出て行き教室に戻って行った。
To be continued