「本当に採ってきたのかい!?」
「へへ〜ん!オレ達は最強なんだぜ!」
「これで作れる?」
「ええ!キミ達、こっちへおいで」
どこか気合いが入った様子で、店員はスキップしながら奥へと行った。
ロザスと龍魔は何が出来るのか期待しながら、店員の後に付いて行った。
「店長!あの飴をまた作りましょ!」
店員は奥のドアを開いて、子供のように大きな声で叫んだ。
部屋の中には店員よりも若い女性が、椅子に座って優雅にティータイムを過ごしていた。
店長は茶色い髪で軽くカールしていて、目の小さい人だった。
「まぁ、本当にあそこへ行ったのね。凄いわ」
拍手、と言って女性は2人に拍手を送った。
拍手を送られたロザスは子供扱いされたようでムッとした顔となり、龍魔はありがとうございますと頭を下げた。
「あ、キミ達の名前、教えてくれる?」
「オレはロザス!」
「龍魔」
「ロザスくんと龍魔くんね。わたしはクルミよ、よろしくね」
「店長!早速あの飴を作りましょ!」
目を輝かせて店員は言う。
さっきまでの店員のテンションと比べて、あからさまに高くなっていた。
これから作るものは凄いものらしい。
凄いものならきっと、桜は喜んでくれるかもしれない。
ロザスと龍魔は心が踊った。
「そうね…でも、先に言っておくけど、成功するか保証はないわよ」
『えっ…』
「これから作る物は幸福玉と言って、名前の通り、人に甘い幸せをもたらしてくれるの。でも、この飴は7割の確率で失敗しちゃうの。理由はわたしにもわからない。それでもいいなら作ってみるけど…どうする?やめる?」
のほほんとした顔で他人事を問いながらクルミは紅茶を飲む。
ロザスと龍魔は顔を見合せないで、同時に笑った。
「そんなこと」
「決まっている!」
たとえ、低い確率だったとしても、それに賭ける。
何かの本に書いてあった言葉だった。
「じゃあ、決定ね。早速始めましょうか」
クルミはティーカップを皿の上に乗せて立ち上がった。
+++
「…龍魔」
「ああ」
2人はテーブルに敷かれた布の上にある、ビー玉のように透き通った玉を見ていた。
ガラスとかで出来ていないが、それは反対側の様子が見えるほど透き通っていた。
光に照らすと、光が中で屈折して、キラキラと輝いていた。
その玉からは甘い香りがほのかにする。
『出来た!』
「おめでとう、2人共」
「店長〜!これは…」
店員は自分の布を広げてクルミに見せた。
玉は透き通ってはいるが、色が濁っていた。
それに、ところどころに白い点もあって綺麗ではなかった。
「うん、失敗だね」
語尾に星を付けてクルミは答えた。
店員はショックのあまり石化した。
固まった店員を見て、クルミは「どうしたの?」と聞いた。
本人は店員がどんな気持ちなのかよくわかっていないらしい。
「クルミさん、色々ありがとうございます」
「ううん。わたしからもありがとう。材料を持って来てくれたお蔭で、またこの飴を作ることが出来たわ。もしよければ、また採ってきて一緒に作りましょう」
『はい』
2人はクルミにちゃんとお礼を言って、ダッシュで秘密基地に戻って行った。
それを見たクルミは「元気ね」と言って笑っていた。
+++
基地に戻った2人は部屋の飾り付けを始めた。
プレゼントが用意出来たから、残りは飾り付けをして主役を待つだけである。
「予定より早く準備出来たな」
「ああ。あとは桜が来るだけだ」
「早く来ねーかな?」
「待っていても仕方ないから、他にも何か作ろうよ」
「そうだな!街に出ようぜ!」
「ああ」
2人は荷物を持って、基地を出て行った。
テーブル上には作った飴が淋しく輝いていた。
それから1日にち、桜の誕生日当日となった。
「ったく、バカ先生の所為で準備をする時間がなくなってしまったじゃねーか」
不機嫌な顔して道端にある小石を蹴ながらロザスは言った。
小石はロザスに蹴られる度に、2、3回跳ねては静止して、2、3回跳ねては静止を繰り返した。
「まぁ、まだ時間があるから。ケーキも買って来たし」
「そーだな!よし!頑張るぞー!」
ロザスは小石を勢いよく蹴って遠くまで飛ばした。
それを合図にロザスは駆け出した。
龍魔もケーキを大事そうに抱えながら後に続いて走る。
競争しながら2人は基地の中へ入って行った。
飾りはすでに済んでいるから、2人は他に何が必要かを楽しそうに話した。
だが、部屋に入った瞬間2人の表情が一変した。
飴が置かれていたはずのテーブルの上には何もなかったからだ。
「飴がない!」
「なんで!?飴なら置いていても問題がないはずだ」
「泥棒かよ!!」
「いや、荒らされた形跡がない」
もう一度辺りを見渡してみるが、変わったところはない。
何が起こっているのか全然わからなくて
「蒸発したってことか!?」
「飴は普通しないから。だけど、あれは特別な飴と言っていいからその可能性もないとは言えない」
「あー!桜が来るっていうのにどうすんだよ!」
「どうかしたの…?」
後ろを振り返ると、そこにはマフィーを抱えた桜が立っていた。
ロザスと龍魔は一気に青ざめて、固まった。
「どうしたの…?顔色悪いよ…」
「あ、あのさ…桜」
「その…な」
次の言葉を言いたくても、喉で突っ返って言えなかった。
プレゼントが用意出来てないなんて桜に告げたくなかった。
いつも忙しい中お菓子を作ってもらったりしているというのに、お返しが出来ないのは2人にとって残念なことだった。
しかし、言うのが遅ければ遅い程、桜が受けるショックが増してしまう。
言おうか言わないか2人は互いをチラチラと見ながら、考えた。
2人の様子を見て、桜は何かを思い出したように持っていた袋を開いた。
「2人共…手を出して…」
2人は不思議に思いながら、言われるままに手を出した。
差し出したそれぞれの手に桜は花柄の可愛い包みに包まれた飴を乗せた。
包装紙がオレンジ色だからきっと、きっとオレンジの味なのだろう。
2人はキョトンとしながら、桜から貰った飴を見た。
「飴にはね不思議な力があるんだよ…砂糖とかを舐めているしか思えないかもしれないけど…舐めている間…必ず幸せな気持ちにしてくれるんだよ…」
そう言うと桜は残った飴玉の袋を丁寧に開いて、飴玉を口の中に入れた。
口を動かしながら桜は幸せそうな顔をしていた。
ロザスと龍魔も桜に倣って、貰った飴玉を口に放り込んだ。
程よい甘さが飴玉から滲み出た。
オレンジの甘い味が口いっぱいに広がって、ロザスと龍魔にも自然と笑みが零れた。
「おいしい…?」
「…おいしい」
「ありがとうな、桜。それから」
『誕生日おめでとう』
そう言った瞬間、ロザスと龍魔は気付いた。
プレゼントをあげることだけが誕生日を祝う全てではない。
大切なのは相手を祝いたいという想い。
例え、プレゼントがなかったとしても、祝うか祝わないでは全く違う。
言葉を伝えるだけでも、プレゼントに負けないぐらいの力があるのだ。
桜は頬を少し赤くして、笑った。
「…ありがとう…ロザス…龍魔…」
一つ一つの言葉を大切にしながら、桜は言った。
すると、突然テーブルの上が光り出した。
3人は驚いて、光り出したテーブルの上を見た。
光が消えると、そこにはさっきまでなかったあの飴があった。
「な、なんで…」
「2人共…あの玉を知っているの…?」
事情を全く知らない桜は1人不思議そうな顔をしている。
2人は揃って顔を見合せると、龍魔がゆっくり話し始めた。
「…あれは桜にあげるはずだった飴なんだ」
「オレ達が来たときはなかったんだけど、突然…」
状況が把握出来ない2人はお店に報告しに行こうかと話し始める。
不思議な飴だと聞いていたが、消えたり現われたりして、食べても影響があるのか怖かった。
もし、食べて何らかの異常が発生したら、大騒ぎである。
桜は不思議そうに飴を見ては、近寄って手に取った。
光にかざしてみると、ビー玉のように透き通って、綺麗だった。
ビー玉と違って落としてしまったら、パリンッとガラスが割れたような音がするだろうと、桜は思った。
光に当ててキラキラと光る飴をじっと見つめて、そのまま桜は飴を口の中に放り込んだ。
『さ、桜!?』
躊躇することなく飴を食べた桜にロザスと龍魔が駆け寄った。
桜は2人のことを気にもせず、平然と口の中で飴を転がす。
左右に転がして、どんな味がするのか探っているみたいだ。
「桜、何が起こるかわからねーから早く飴を吐き出せ!」
しかし、桜は話を聞いていないのか、夢中で飴を舐め続ける。
龍魔が手を伸ばすと、突然桜がふらついた。
驚いて龍魔は伸ばした手で桜を支えた。
桜の体からは力を感じなかった。
「桜っ!桜っ!!」
「おい!しっかりしろよ!」
次々と起こる突然な出来事に2人の頭はついていけなかった。
桜の身に何かあったらどうしよう。
2人の頭は真っ白だった。
必死になって桜の名前を呼んでいると、
桜の足が動き、龍魔の腕を掴み、体を起こした。
『桜!?』
「ビックリした…舐めていたら突然意識が飛ぶから…」
「驚いたのはこっちの方だぜ!」
「あの飴には人を幸せにすることの他にも作用があるとはな」
「待ってろ桜!今すぐ問いただしに行くからな!」
「待って…その必要はないよ…」
意識を失った本人である桜が止めた。
「なんでだよ!?桜が意識を失っなんじゃねーか!場合によっては死ぬかもしれねーぞ!」
「大丈夫…私…この飴のこと知っているから…」
『えっ!?』
「まさかこの飴がこちらでも作られているとは…思いもしなかったよ…」
そうだよねと、桜は傍に来たマフィーに確かめる。
マフィーはにゃあ、と鳴きながら、頷いた。
そういえば桜が倒れたとき、マフィーは平然としていたことを、2人は思い出した。
2人は安心して、全身から力が抜けるような気がした。
「…ところで、桜、その飴にはどんな作用があるんだ?」
「飴を舐めると…飴がすぐに溶けて一瞬の夢を見せるの…」
「夢?」
「そう…舐めた人がもっとも見たいと思う幸せな夢を…」
「桜は一体どんな夢を見たんだ?」
「それは…」
言うのが恥ずかしいのか、困った顔をして桜は目を四方八方に動かした。
でも、困ったその顔にはどこか嬉しそうだった。
そして時々、ロザスと龍魔と目が合うと、ほんの一瞬だけ桜が微笑んだような気がした。
「…ヒミツだよ…」
「えー!教えてくれたっていいだろ!?」
「言ったら面白くないでしょ…?」
クイズをしているかのように、桜は言う。
イタズラをした子供のような笑顔をして、桜は赤い舌を小さく2人に見せる。
ロザスは教えろ!と、何度も桜に問いただす。
桜はおかしそうに笑って、ヒミツは秘密だよと、返す。
いつまでも言わない桜にロザスはくすぐって無理矢理言わせるぞ!と脅す。
桜はくすぐりが苦手だった。
脇に触れただけで、くすぐったいと反応するほど、くすぐりに弱かった。
脅されても桜は笑いながらロザスから逃げた。
逃げる桜にロザスは待て!と言いながら後を追う。
走り回る2人を龍魔は苦笑しながら見ていると、傍にマフィーが来た。
『ありがとうございます。桜様が久しぶりに笑顔を取り戻しました。今宵は桜様にとってきっと思い出に残る誕生日となるでしょう』
「桜にやっぱり何かあったのか?」
『…いつか話します。取り敢えず、今日は折角の桜様の誕生日ですから、楽しみましょう』
「そうだな…ロザス!そろそろいい加減にしろ!」
龍魔が止めに入ると、ロザスが反論を言い出した。
龍魔が冷静に突っ込むと、桜はクスクスと笑って不満そうな顔するロザスを見ていた。
楽しそうな3人をマフィーはじっと見守っていた。
楽しい誕生日は始まったばかり。
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あとがき
書きたかったこと。
誕生日はプレゼントがすべてじゃないんです!
プレゼントプレゼントと気にするんじゃない!って言いたかっただけです。
久しぶりに友情系書いた、といっても書き直しですが、楽しかったです。
最近、恋愛ばかりで友情が欠けているなぁ、なんて(笑)
他のジャンルも書きたいです。
次の更新はファンタジーになる予定です。
では!