You can kiss me lips

 

 

 

 


ギラギラとした太陽の光がアスファルトに降り注ぐ夏。
街中を歩いている人達は汗を拭いたり、冷たい飲み物を飲んだりしながら暑いと口々にしていた。
東京の夏は他の地方と比べて、高層ビルや車が多く、とても暑いのだった。
デパートの中やスーパーの中、コンビニやビルなどの中は冷房がついていて涼しいが、外に出たとたん、ダラけてしまいそうだ。
この時期になると外で友達と歩いている女の子達は紫外線を気にしていた。
男の子はあまり気にしないかもしれないが、女の子は顔に染みが出来たり焼けたりしたくないと思っているのだ。
小林冶智(こばやしやさと)という男の子の目の前にも紫外線を気にする女の子がいた。

「お前って、いっつも日焼け止めをつけているな」

公園の日陰のベンチに座って日焼け止めクリームを塗っている女の子を見ながら冶智は言った。
周りには12時を過ぎた所為か先ほどまでいた子供達がいなく、公園には冶智と冶智の目の前にいる女の子だけでセミの鳴声が五月蝿く聞こえた。

「だって、焼けたくないもん」

日焼け止めクリームを腕に塗りながら中山奈佳枝(なかやまなかえ)は答えた。
夏といえば紫外線。
紫外線は女の子の敵である、と奈佳枝は冶智が今日などの晴れたの空に話をするといつも言っていた。
何度も聞いた話だが少しだけ気にくわない点があった。

「・・・それだと出来ないだろ・・・」

視線を下にして少し不満そうな顔をしながら冶智は奈佳枝に聞こえないに呟いた。
すると、大丈夫だよ、と奈佳枝の声が聞こえた。
顔を上げると奈佳枝はボトルから日焼け止めクリームを取り出して少しずつ足に塗りながらこちらに笑顔を向けた。

「どこが大丈夫なんだ・・・」

冶智がため息まじりに言うと、奈佳枝は手を止めて立ち上がり、冶智の五月蝿い口を塞いだ。
5秒ぐらい経つと奈佳枝は冶智の顔から離れて日焼け止めクリームをまた塗り始めた。
急にされた冶智は突然のことに驚いた顔をしながら固まっていて、少し経つと意識を取り戻した。

「な、奈佳枝!お前!!」
「口なら、日焼け止めを塗っていないから・・・大丈夫でしょ?」

口の端を上に上げて奈佳枝は少し恥ずかしいが嬉しそうに笑っていた。
やられた。
冶智はそう考えると少し悔しい思いが込み上げてきそうだった。

「さてと、日焼け止めを塗り終わったし・・・」

日焼け止めクリームを塗り終わった奈佳枝が立ち上がると、今度は冶智が奈佳枝の唇を奪った。
奈佳枝は先ほどの冶智のような状態になっていた。

「仕返し」

意地悪そうに冶智が笑うと奈佳枝は少し悔しそうな顔をしていた。

「そうかぁ、日焼け止めを塗っている時は口と口とでキスすればいいんだよな?奈佳枝さん」
「・・・おっしゃるとおりです・・・」
「もう1回するか?」
「遠慮しております」
「嬉しいくせに」
「・・・・・・」

言葉に行き詰った奈佳枝は顔を桃のように赤くさせながらそっぽを向いた。

「奈佳枝、こっち向けよ」

冶智が声を掛けても奈佳枝は怒ってるのかそっぽを向いたままだった。

「あっ、上原だ」
「えっ!」

上原という名前に反応した奈佳枝が降り向いた瞬間、冶智はまた奪った。

「ご馳走様」
「・・・最悪」

本日2回も奪われるなんて思ってもいなかった奈佳枝は冶智を少し睨んだ。

「最悪で結構、だが、こんな俺を選んだのはお前だぜ」
「それは・・・」
「まさか・・・あの日のことを忘れたのか?」

先ほどと比べて冶智はとても不満そうな顔をした。
その顔が面白かったのか奈佳枝は笑った。

「忘れてないよ」

無邪気に笑いながら奈佳枝が言うと、冶智は安心そうな顔をした。
冶智の顔を見てあの日のことが頭に浮かんだ。
あの日の放課後、奈佳枝はこの公園の前を通りかかったら、冶智に逢った。
冶智はちょっと言いか、と言って公園の中へと入って行った。
最近、気になっていた人に話し掛けられた奈佳枝は何だろうと思いながら冶智の後をついて行った。
そして、この木の下で、冶智に告白された・・・。

「とても幸せに思った日のことを忘れるはずないよ・・・」

告白された瞬間、奈佳枝はとても嬉しくてすぐに返事をした。
初恋だった。
初恋が実るなんて確率が低いと言われているが、叶った奈佳枝はあの日、その叶った人達の1人となった。
あの日のことを思い出していると、奈佳枝は嬉しそうな顔をしていた。

「何か言ったか?」

奈佳枝が何か言ったことに気付いたのか冶智は不思議そうに奈佳枝に訊いた。

「なんでもなーい、さて、行こう!」
「そうだな」

冶智と奈佳枝は一緒に公園を出て駅の方へと歩いていった。
2人がいたベンチには暖かな風が流れていた。

 

 

end

 

 

 

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