後生畏べし
とあるケーキ屋でパティシエの勉強をしている新人が入ってきた。
新人の名は龍魔と言う。
龍魔の料理の腕は勉強中の所為かまだ普通の人とあまり変わらなかった。
そんな龍魔を見てこんな時期にどうして新人なんか入れたのだろう・・・と龍魔の自己紹介に思っていた人がいた。
その人の名は修也といい、この店の店長の次に腕の良い人だ。
今の時期は一ヵ月後におこなわれるパティシエ選手権という、店々ごとに店長以外の人が出る大会があるのだった。
そんな大事な時期にどうして龍魔ってやつを入れたのだろう・・・と修也はとても不思議に思った。
「・・・ということで、来週の月曜日はこの店の代表者を決める。それぞれ、その日に向けて頑張れ!」
店長がそう言うと周りの人はどうせ代表は修也だろと口々に言っていた。
周りの様子を見て修也は心の中で鼻を高くしながらどんなのを作ろうか考えていた。
一週間後・・・。
いよいよこの店の代表者を決める試験の当日をむかえた。
修也は絶対に代表になってやると思いながらケーキを作り始めた。
ケーキが出来ると店長に食べてもらい判定を待つだけだった。
今回の試験には新人の龍魔も参加していた。
店長の判定を待ちながら修也は今回のケーキも出来が良かった・・・今回も俺が代表だと思いながら店長の判定を持っていた。
「結果は・・・龍魔、お前が代表だ」
修也は息をのんで店長の話を聞いた。
何故・・・何故だ!何故俺じゃなく龍魔だんだよ!と修也は思っていた。
「期待しているぞ、龍魔」
「はい!」
店長は龍魔の肩を軽く叩くと店の奥へと歩いて行った。
この結果を認めたくない修也は奥へと歩いていく店長に近付いた。
「店長!何故俺ではなく龍魔なのですか!」
「修也・・・このケーキを食べてみなさい」
店長は近くのテーブルに置いてある龍魔が作ったケーキを修也に差し出した。
店長に言われるままに修也は龍魔のケーキを一口食べてみた。
ケーキを口の中に入れた瞬間、修也はとても驚いた表情をした。
「・・・おいしい・・・」
「そうだろ?俺も驚いた。この一週間でここまで成長するなんて・・・後生畏べしだな・・・」
「・・・・・・」
「これでわかったか?修也・・・」
「はい」
修也は龍魔が作ったのケーキを食べて龍魔が代表者になることを認めた。
あの日、食べたケーキは修也の目標へと変わっていったのであった。
end