注)パラレルです!
原作と大幅に内容が食い違っています!
時間は織姫が連れて行かれる前です
夢の世界で会えるなら
「…好きだ」
今、ルキアの目の前にいるのは幼馴染で家族のような存在の恋次が立っている。
ここは現世のとある、丘。
学校が休みの日、突然、恋次が黒崎家に来て、見せたいものがあるといってルキアをここまで連れてきた。
恋次が来たとき、遊子と夏莉と一心の三人が驚いて、一護に何か言っていた。
そんなのは気にせず、ルキアはアッサリと了承して、一護を置いて黒崎家を後にした。
それで、着いたのがこの丘の上だった。
ここから空楽町が見下ろせて、しかも風が気持ちいいからいいスポットである。
こういう場所はルキアが好むと恋次は考えて、ルキアを連れてきた。
そして、こんないい景色の場所でルキアに告白しようと、頭の中で計画していた。
だが、その計画はルキアによって、失敗に終わってしまった。「すまぬ…出来ないのだ…私には…人を愛すことが…出来ないのだ…」
ルキアは恋次から目を逸らして、断った。
同時にルキアの胸がチクリと痛かった。「私は…私は…この手で…上司を殺したことがある…」
「だが、あれは「私が殺したことにはかわりがない!!」だが!ルキア!!」恋次がルキアの肩に強く手を乗せる。
だけど、その腕をルキアは振り解いた。
こんなことなんて、ルキアが朽木家の養子になる以来、初めてのことだった。
しかも、そのときは肩に乗せた手を手で下ろしたというのに、今回は勢いよく振り払った。
汚れ物を振り落とすかのように。「…もう…私に…その感情を…向けるではない…」
そう言ってルキアはその場を去って行く。
後ろにいる恋次は黙って俯いているようだ。
―いつから、気配を感じるだけで人の行動が手に取るようにわかるようになったのだろう。
後ろを振り返っても恋次の姿が見えなくなるぐらい遠くまで来ると、ルキアは立ち止まって空を見上げる。
空は丁度、太陽を隠すように雲が太陽の前を通っていた。
光が遮られて、辺りは薄暗くなっていく。
―ああ、私はいつから誰かを騙す事が平気になったのだろうか。
考えてみるが、ルキアはいつからだったのかすっかり忘れてしまった。
人間はどうでもいいことは覚えているというが、ルキアは違うらしい。
と言っても、ルキアは“人”ではなく“死神”なのだが。
雲が流れて、隠されていた太陽が再び光を刺してきた。
―眩しい。
眩しく輝く太陽に手を翳し眩しさのあまり目を細めて、ルキアは空を見上げ続ける。
前ならこの陽が眩しくて、暖かくて気持ちよかったというのに。
いつからだろう。
“この眩しさが嫌になっていったのは”。「ルキア」
「一護…」毎日毎日顔を合わせている、相棒とも言える存在の一護が立っていた。
一護は辺りを見渡して、どこか浮かない顔をしていた。「恋次は?」
「あの丘にいるだろう……気になるのか?」
「まぁな、あいつは俺に相談してきたからな」
「そうか…だが…私には人を愛すことが出来ぬのだ…」
「…帰ろうぜ。遊子がうるせぇからな」何処か悲しそうな声をして一護はルキアに背を向けて歩き出した。
先を歩く一護の背中を見ては、ルキアも歩き出した。
前はルキアがマイナスな事を言うと、一護は文句を言ってきたが、最近では言わなくなった。
いや、言えなくなってしまったのだろう。
“前までのルキア”なら、それを聞けば気持ちを切り替えていたが、“今のルキア”はそんなことをしなくなった。
そんなルキアに一護は愛想をつかした訳ではない。
ルキアに掛ける言葉が見つからないから、黙っていたのだった。―こ奴、一護は何も知らない。
―私が今、どういう状況になっているのか。かといって、ルキアは気付いてほしいとは思っていない。
気付いたとしても、一護はそれについてどうもこうにもならないことだとわかっているからだ。
―これは…
―これは私が自ら“望んだ事”だから。
+++
ルキアはぼーっと空を見上げた。
空は青く、白い綿のような雲が浮かんでいた。
だけど、雲は浮かんでいるだけで、流れていなかった。
普通なら動いているというのにこの世界の時間は止まっていた。
だけど、それは世界だけであってルキアの“体”は止まっていなかった。「また告白されたのか?朽木」
黒髪で、もし、髪がオレンジだったら一護と見間違えてしまいそうな人がルキアに声を掛ける。
この人はルキアがこの世界にいるからこそ、会える人物だった。
その人物を見た途端、ルキアは穏やかな表情へと変わった。
心の底からその人物に会えて嬉しいと叫んでもいいぐらい嬉しかった。「ええ。でも、断りました」
「いいのか?断らねー方がよかったんじゃねぇか?」
「いいのです。私が、臨んだことなのですから」そう言うと、そうか?と言って、その人はルキアの隣に座った。
この人は志波海燕。
虚との闘いの最中、ルキアがこの手で殺してもう存在しないはずの上官だった。
どうして、ここに海燕がいるのか。
最初はルキアにも何が何だかわからなかった。
混乱して、自虐行為をしてしまいそうにもなった。
だけどそのとき、今ルキアの隣に座っている海燕が止めてくれた。
その止め方はルキアの知っている海燕と全く同じで、虚に取り付かれたり、誰かが偽っている感覚が全くしなかった。
冷静になっていくルキアの頭の中で、ふと海燕が最後に言った言葉を思い出した。『心は此処に置いて行ける』
その言葉を思い出した瞬間、ルキアはこの状況の意味の全てがわかった。
―そう…私の中に海燕殿の心があるのだ。
だから私の夢、いや私の世界と言った方がいいのだろうか。
そこに海燕殿が出てきてもおかしくないのだ。
これは誰にも言えない秘密である。
大切な
例え
口が裂けても
言えない
私と海燕殿の
秘密である。
そう考えていると、ルキアの顔がいつの間にか緩んでいた。
「何笑ってるだ?」
「何でもありません」だけど、クスクス笑い出すルキアに海燕は教えやがれ、と言いながらくすぐってきた。
こうやっているとルキアは本当に海燕がいたときのことを思い出す。
ルキアの心はあの日以来、時間が止まった。
いや、前は進んでいたが、いつしか時間が巻き戻しされて、またこの時間で止まってしまったのだった。
それは、ルキアが“ある事”を知ってしまったからだった。
次第に海燕のくすぐりが収まっていく。
ルキアは楽しそうに顔を上げると、海燕は深刻な顔をしながらルキアを見ていた。「朽木」
「なんですか?」
「…もう、この世界へ来ることを臨むな」
昔の私ならショックを受けていたその言葉に私はもう、ショックを受けなくなっていた。
その言葉を聞いたのは海燕殿と会ってから何度も聞かされた言葉だった。
やっと再会出来た日、また会えた日。
会う日会う日に海燕殿は私にその台詞を言う。
…何を言っても今の私には意味がないとわかっていながら…
「…いいのです……やっぱりここがいい…海燕殿の隣が…いいのです…」
「だが、お前は…」
「いいのです…もう…後戻りが出来ないところまで来てしまいましたから…」
―そう…私は禁忌を犯してしまった…
海燕殿がそれを望まないと分かっていながらも
私はその道を選んでしまった
悪魔の囁きとやらに、私は負けてしまったのだった。
「朽木…」
「悲しい顔をしないで下さい。これでよかったのです。こうすれば、海燕殿の傍に居られるのですから」
「俺はそんなの望まねぇ!」
「私が望むのです」私が微笑むと、海燕殿は言葉を無くして黙って私を見る。
こうして貴方の傍にいられるという幸福を、私はもう手放したくない。
こんな幸福な私を何処からか呼ぶ声が聞こえてきたような気がした。
口元に弧を描いて私は立ち上がった。「…何やら騒がしいようです。海燕殿。また此処でお会いしましょう」
「朽木。黒崎って奴等に打ち明けるんだ!」
「もう遅いのです…私はもう…
…死神ではないのですから」
ああ、何度目だろうか。
貴方がとても悲しそうな瞳で私を見るのを見たのは。
+++
目が覚めると、一護、雨竜、チャド、織姫、恋次の顔があった。
私が目を覚ますと、織姫が喜んで心配そうに話し掛けて来た。
一護と恋次はとても心配そうに私の容体を聞いてくる。
―どうしてこんなことになったのだ?
そうだ。
私は一護の家に戻るまでの間、突然倒れたのだった。
それに驚いた一護は黒崎家ではなく、浦原のところへ連れてきたのだろう。
記憶にはないが、着ている服と、目覚めるときに見た何度も見た天井がそれを物語っている。
二人に心配されるのも無理はない。
だけど、私は何も言わず黙っていた。
今、私は一体どんな顔をしているのだろう。
表情の実感がない。
あるのは…
体が
気持ちが
だんだん
楽になっていく
感覚だけだった…
ああ
とうとう
始まってしまった。
チャッピーを飲んでいないというのに、私は偽りの体から出た。
魂を無くした偽りの体は力なく静かに倒れた。
もう、一生入ることはない体。
お疲れ様。
今まで、私を入れてくれてありがとう。
偽りの体に背を向けたまま、私は心の中で感謝の言葉を述べる。「ルキア!?」
「どうなってんだよ!なんでルキアの姿が…!」
「ルキア!何か言えよ!」
「朽木さん!」私の周りにいる者達は動揺し、声を上げて、立ち上がった。
一護の手が私に伸びてくる。
だが、私はその手を振り払った。
振り払われた一護は信じられないといった顔をして私を見る。
一護の反応に私は気にせず、部屋にある鏡の前に立つ。
そこにいるのは…
白い服を身に纏い
白い仮面を頭に被った
私が立っていた。
―思ったよりも早かったな。
鏡の前でつい苦笑してしまった。
この姿の私に一護達はまだ理解が出来ていない。「どうなってんだよ!なんでルキアが「騒ぐな」
「……朽木さん…?」私の声に水を打ったように静まり返った。
やれやれ、やっと静かになった。
元凶の私はそんな暢気なことを思いながら振り向いた。「…私は…朽木ルキアではない」
「何言ってんだよ!ルキアはルキアじゃねぇか!」
「一護…すまぬ。私はもう死神ではない。私は…破面No.∞ルキアだ」それだけを言い残して私は一護達の前から姿を消した。
当たり前かもしれないが、最後まで一護達は信じられないという顔をしていた。
+++
虚園。
初めてくるはずの場所。
…いや、違う。
ここへ来た途端、私の頭の中で私の知らない記憶が再生される。
それはこの姿でいる私が虚園の中を楽しそうに回っている。
そして、私の腹に穴を開けたグリムジョーという奴と一緒に話したりしていた。
これはきっと、失われていた記憶。
―…そうか、私は…最初から一護達とは対立する者だったのか。
すぐ近くから破面の一人の気配がした。
向いてみると、そこには白い服を来た海燕殿が立っていた。「本当に来たんだな」
「はい。藍染様に挨拶をしてきます」
「俺も行くぜ」
「ありがとうござ…いや、貴様には敬語がいらないな、アーロニーロ」私がそう言った瞬間、アーロニーロは一息置いてから黙って仮面を付けた。
「…何故ワカッタ」
「この私がわからぬでも思ったのか?」
「……」
「元々破面であった私は記憶を失って尸魂界へと行った。そのとき、同時に私は力を失ってしまった。だが、ここへ来た途端、私は全てを取り戻した。いや、私は前の力はおろか、その上を上回っておるぞ」
「全テハ藍染様ノタメニカ?」
「…そうかもしれないな。だが、私は違う。私がここへ来たのは夢の中で海燕殿にずっと会うためだ」アーロニーロに嬉しそうな顔を見せて、私は藍染がいる方へ足を進める。
ここの記憶がなかったときの私は藍染のことをとても恨んだ。
だが、今はそんなことなんてどうだってよくなっていた。
だって、今は夢の中でずっと海燕殿に会えるのだから。
うっとりとした顔をしながら私は白く大きな扉を開いた。
堕ちていく
堕ちていく
黒かった私は再び白へと堕ちていく
恐れなどない
これで永遠に夢の中で貴方に会えるのなら
仲間だった者が敵になり
敵だった者が仲間になる
悲しくはあるが、貴方に会えるのだから再び落ちようが構わない
「ようこそ、朽木ルキア。…いや、おかえり、破面No.∞ルキア」
例え、貴方が今の私を嫌おうとも
私はこの道を後悔しない
永遠に貴方の傍にいられるのだから
えーっと、漫画のアーロニーロの話を見て、
他サイトで破面ルキアのネタを見て、
お題を見て、話が膨らんでいったらこうなりました(笑)
こういうルキアもいいなぁ、なんて思ったりしています^^
それより、BLEACHの方がほとんど放置ですね 汗
メインだったというのに…