とても五月蝿くて賑やかである昼間と比べてとても静かで落ち着きのある夜。
辺りはとても暗く家々の照明が消えているところが多い真夜中にルキアは目を覚ました。
頭の中にあの声が横切りながらルキアは暗い表情をして遊子のパジャマから普段着に素早く着替えた。
普段着に着替えるとルキアは近くに寝ている遊子と夏梨に気付かれないように部屋のドアをそっと開けて廊下へと出た。
廊下に出るとそこは暗闇の道でルキアは寝ている遊子達を起こさないように足音をたてずにある部屋のドアを開けて中へと入って行った。
中に入ると静かに寝息をたてながら寝ている部屋の主の方をルキアは見てゆっくりとドアを閉めて部屋の主の方へと足を運んだ。
部屋の主、一護の隣に立つとルキアは暗く悲しそうな表情をして一護の寝顔を見つめていた。


「ずっと、そばにいたかったけど・・・」


その次を言おうと声に出そうとしたがルキアの心のどこかが言ってはいけないと止めった。
ルキアは首を横に振って・・・止めないでくれ・・・と自分の心に言い聞かせた。
『もう、独りで抱えるんじゃねーぞ』
そう思っていると一護があの時の優しく言ってくれた声がルキアの頭に流れてきた。
あの優しさ、あの暖かさ、あのぬくもり・・・嬉しかった・・・とルキアは目をゆっくり閉じて心の中で何かを決心すると目を開けて一護を再び見た。


「一護・・・約束を破って・・・すまぬ・・・」


寝顔を見て苦笑しているとルキアの頭に一護との約束が頭をよこぎり少しためらったがもう決めた事だからと思うと言えそうな気がした。


「・・・さよならだ・・・一護・・・約束を破ってすまぬ・・・」


一護にそう告げるとルキアは窓の前に立ち月の光を浴びながら姿を消したのであった。
ルキアが消えるところまでの様子をオレンジ色の髪の少年は黙って見ていて両手の拳を強く握り締めた。

・・・何でだよ・・・
何で・・・お前は俺の前からいなくなるんだよ・・・
消えるなんて・・・聞いてねぇぞ・・・
行くなよ・・・
行くんじゃねーよ・・・!

 


「ルキア!」


大声でルキアの名前を呼びながら一護は飛び起きた。


「お、お兄ちゃん、ルキ姉がどうしたの・・・?」


偶然、廊下を歩いていた遊子は驚いた顔をしながら一護の部屋の扉を開けて部屋の中に入っていた。


「あ・・・いや・・・なんでもねぇ・・・」


不思議そうに思った遊子は首を傾げながら一護を見ていた。


「変なお兄ちゃん、朝ご飯できたから早く降りてきてね」
「おう」


そう言い残すと遊子は扉を閉じて階段を下りていった。
階段を下りていく遊子の足音が遠くなっていくと一護は下を向いて険しい顔をした。

・・・夢か・・・
何であんな夢を見るんだよ・・・
・・・あの夢が・・・
・・・現実で起こるわけねーよな・・・

と考え思っている一護はベットから出て制服に着替えて朝食を食べる為、階段をおりてリビングに向かって行った。


「おはよう、一兄」


リビングに行くと椅子に座ってもう朝食を取っている夏梨がいてその隣には遊子が朝食を取っていた。


「親父は?」
「ちょっと出ている」
「そっか」
「おはようございます、黒崎くん」


一護が椅子に座ると隣に座っているルキアがいつもの猫被りの笑顔で挨拶をしてきた。
ルキアを見た瞬間、朝見た夢が頭を横切りルキアの笑顔を見てそんなこと・・・あるはずがないよな・・・と一護は思っていた。


「おはよう・・・」


朝食を取った後、一護は遊子と一緒に朝食の後片付けをしているルキアを待って一緒に学校へ向かった。
向かっている途中、あるはずがないと思っているはずなのに朝見た夢がずっと頭に引っ掛かっていた。


「なぁ、ルキア・・・お前は・・・もう・・・勝手にいなくなるわけねぇよな・・・」


勇気を出して一護が歩きながら聞くと隣にいるルキアは目を丸くして一護を見上げた。


「何故そんな事を聞くのだ?何かあったのか?」
「いや・・・何となく・・・」
「変な一護だな・・・」


歩きながらルキアがクスクスと笑っていて一護はムッとした。


「それよりどうなんだよ」


少し怒った感じで言うとルキアは笑うのを止めて穏やかな表情をしながら前を向いて遠くを見るような目をした。


「・・・出来ればずっといたいのだが・・・私は仕事でこちらの世界へ来ているのだ・・・いずれ・・・あちらの世界へ戻らなくてはならない・・・」
「そうか・・・」


それはそうだな・・・と思いながら一護は暗い表情をして視線を下に落とした。


「・・・だが・・・会おうと思えば・・・いつでも会えると私は思うぞ・・・」


ルキアが一護を見上げて穏やかな表情で微笑むと一護は顔を上げてルキアにつられて微笑んだ。


「・・・そうだな・・・なぁ、ルキア・・・」
「何だ?」
「1つ・・・頼み事をしてもいいか・・・?」
「・・・その頼み事の内容がよければいいぞ」


少し間を空けた後、ルキアが答えると一護は立ち止まりルキアを優しく抱き締めた。


「・・・一護?」


突然の一護の行動にルキアは目を大きく開いて驚いていると一護は耳元で優しく囁いた。


「もう・・・俺に何も言わず、勝手にいなくなるな・・・」


一護の暖かな言葉を聞いたルキアはその言葉がとても嬉しくてとても嬉しそうな顔で笑っていた。


「ああ・・・私は・・・もう、貴様に何も言わずいなくならない・・・」


言葉を返すと一護はその言葉に安心したのか嬉しそうな顔をしながらルキアを解放した。


「有難うな、ルキア・・・」


そう言うと2人は顔を見合わせて笑うと2人は学校への道を歩き始めた。


「あー・・・なんか今日の俺、変なことを言ったな・・・」


歩きながら一護がぽつりと呟くとまったくだ・・・と思いながらルキアはクスクスと笑った。


「いや・・・私は・・・嬉しかったぞ・・・」


顔を少しだけ赤くさせながらルキアが言うと一護もつられて顔が少しだけ赤くなりルキアから視線をそらして手で顔を覆い隠した。


「・・・赤くなんなよ、こっちだって恥ずかしかったんだぜ」
「そうだな・・・」


顔を赤くしながら2人はお互いに嬉しい気持ちになりながらまたクスクスと笑った。
その後、2人は仲良く学校への道を歩いていったのであった。

 

 

 


end

 





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